ネットリテラシー / 実践
Nodです。前回の記事でXのアルゴリズムが国際対立を増幅する仕組みを整理した。今回はその延長として、実際に散見される「根拠なき暴言」や「飛躍した攻撃」に具体的にどう向き合うか、そしてそれは日本語話者側も例外ではないという話をする。
以下は今回の日本とスペイン語圏の議論の中で実際に拡散されていた投稿だ。一部は翻訳の正確さも合わせて確認する。
ここで重要な判断が必要になる。上記の投稿は、すべてが同じ性質のものではない。
投稿①「日本人はすぐブロックする」は侮辱的な言い方だが、「批判的な返信にどう向き合うか」という指摘として議論の余地がある。感情的に反応する前に、「事実としてそういう傾向があるか」を考えることはできる。
投稿③⑤のような人種差別的侮辱語を含むもの、投稿②④のように「日本人全員が〇〇」という根拠なき断言は、反論の相手ではなく通報の対象だ。応答することで相手に「議論が成立している」という印象を与えてしまう。
暴言に反論すると、暴言を「議論のテーブルに乗せる」ことになる。「日本人全員が[***]」という投稿に正面から反論することは、その前提を一度受け入れることに近い。スルーか報告が、多くの場合正解だ。
投稿④のケースは特に注意が必要だ。X自動翻訳が「ハラスメント・いじめ・ロリコン」を「未成年者のノンポルノ的な人たちからの非難」と誤訳していた。これを読んだ日本語話者は「何のことを言っているのかわからない」と素通りしたか、別の意味で理解してしまった可能性がある。
逆も起きる。日本語の皮肉や婉曲表現がスペイン語や英語に訳された結果、本来の意図よりずっと攻撃的に見えることがある(article12参照)。翻訳が正確かどうか確認してから反応するのは、特に国際議論では基本中の基本だ。
これは一方的な話ではない。日本語でも「外国人は〇〇だ」「あの国の人間は全員〜」という全体化した侮辱投稿は存在するし、Xでのブロック文化についても「批判を受け入れずすぐ逃げる」という投稿①の指摘は、日本語話者コミュニティで全く当てはまらないとは言い切れない。
「日本人が問題視しているツイートのスクリーンショットを収集して拡散する」という行為自体も、怒りを広げる一因になりうる。スクリーンショットを見た人が相手側のアカウントを集中攻撃するケースも珍しくない。
相手の暴言ツイートをスクリーンショットして日本語で拡散すると、「こんなひどいことを言っている」という怒りの共有になる。それ自体は理解できる行動だ。しかし、そのスクリーンショットがさらに拡散されるとき、相手への集中攻撃が始まることがある。
問題のある発言を記録・報告することと、コミュニティの怒りを集めるために拡散することは、目的が違う。前者は有効な手段だが、後者は対立を広げる可能性がある。
X自動翻訳は誤訳することがある(投稿④がその例だ)。スペイン語・ポルトガル語・英語であれば、DeepLやGoogle翻訳で原文を確認してから反応する。「何を言っているかわからない」状態で感情的に返信しても、すれ違いが深まるだけだ。
人種差別的侮辱語を使ったもの(投稿③⑤)、証拠なく集団を犯罪者扱いするもの(投稿②)は、Xのポリシー違反として報告できる。反論するより報告する方が実質的な効果がある。返信することで相手に注目を集めてしまうリスクもある。
報告の手順:投稿右上の「…」→「報告」→「ヘイトスピーチ」→対象グループを選択。
投稿①の「日本人はすぐブロックする」のような批判は、言い方は乱暴でも内容として向き合える余地がある。「批判的な意見に対してブロックで応じるのは建設的ではない」という点を自分たちも確認する機会にもなる。暴言を暴言として返すのではなく、指摘の中に実質的な問いがあるかを探す。
「スペイン語圏の人間はこういうことを言う」「日本人はこうだ」という全体化は、どちら側からも対立を深める。個人の発言に個人として返す。「あなたは〜と言っているが」と主語を個人に留めることが、議論を個人間に収める第一歩だ。
こうした暴言投稿をゼロにすることはできない。アルゴリズムは感情的なコンテンツを優先し、怒りは拡散しやすい。しかし「減らす」ことはできる。
一人ひとりが「自分の発言が翻訳されて相手に届く」という意識を持つこと。そして「この相手は議論したいのか、ただ怒りをぶつけたいのか」を見極めること。議論に値しない相手に時間を使わないことは、消耗を避けるだけでなく、対立の連鎖を一つ断ち切ることでもある。
暴言に対して暴言で返すと、アルゴリズムはそのやり取り全体をエンゲージメントの高いコンテンツとして拡散する。静かに報告して離れることは、「負け」ではなく「燃料を断つ」行為だ。
互いに向き合えるのは、議論をしたい人どうしだけだ。それで十分だと思っている。
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